雁《かり》(wild goose)の童子《どうじ》(boy) 宮沢《みやざわ》(Miyazawa (p,s))賢治《けんじ》(Kenji (m)) ----------------------------------------------------------------- [表記《ひょうき》((vs) declare)について] ●底本《ていほん》(original text)に従《したが》い(to follow)、小学校《しょうがっこう》(primary school)1・2年《ねん》(year)の学習《がくしゅう》((vs) study)配当《はいとう》(share)漢字《かんじ》(Chinese characters)を除《のぞ》く(to except)漢字にはルビ(ruby)をつけた。ただし(however)、同一《どういつ》(identical)語句《ごく》(words)についてはルビは初出《しょしゅつ》(first appearance)のみ((suf) only)につけた。 ●ルビは「漢字《ルビ》」の形式《けいしき》(form)で処理《しょり》((vs) processing)した。 ●[※番号《ばんごう》(number)]は、入力《にゅうりょく》((vs) input)者《シャ》(person)の補《ホ》(supplement)注《ちゅう》((vs) annotation)を示《しめ》す(to denote)。補注は、ファイル(file)の末尾《まつび》(end)に置《お》いた(to place)。 -----------------------------------------------------------------  流沙《るさ》(Rusa (loc))[※1]の南《みなみ》(south)の、楊《やなぎ》(willow)で囲《かこ》まれた(to surround)小《ちい》さな(small)泉《いずみ》(spring)で、私《わたくし》(myself)は、いった(to roast)麦粉《むぎこ》(wheat flour)を水《みず》(water)にといて、昼《ひる》(noon)の食事《しょくじ》((vs) meal)をしておりました。  そのとき、一人《ひとり》(one person)の巡礼《じゅんれい》(pilgrimage)のおじいさん(male senior-citizen)が、やっぱり((id) (uk) also)食事のために、そこへやって来《き》ました(to come)。私たちはだまって(to be silent)軽《かる》く(light)礼《れい》(bow)をしました。  けれども(however)、半日《はんにち》(half day)まるっきり(completely)人《ひと》(person)にも出会《であ》わない(to come across)そんな旅《たび》((vs) travel)でしたから、私は食事がすんで(to finish)も、すぐに(instantly)泉とその年老《としと》(to age)った巡礼とから、別《わか》れて(to part from)しまいたくはありませんでした。  私はしばらく(little while)その老人《ろうじん》(the aged)の、高《たか》い(tall)咽喉仏《のどぼとけ》(adam's apple)のぎくぎく動《うご》く((vi) to move)のを、見《み》る(to see)ともなしに(without)見ていました。何《なに》か(something)話《はな》し掛《か》けたい(to talk (to someone))と思《おも》いまし(to think)たが、どうもあんまり向《むこ》う(the other party)が寂《しず》か((an) quiet)なので、私は少しきゅうくつ(uneasy)にも思いました。  けれども、ふと(suddenly)私は泉のうしろ(behind)に、小さな祠《ほこら》(small shrine)のあるのを見付《みつ》けました(to discover)。それは大《たい》へん(very)小さくて、地理学《ちりがく》(geography)者や探険家《たんけんか》(explorer)ならばちょっと(somewhat)標本《ひょうほん》(example)に持《も》って行《い》け(to take)そうなものではありましたがまだ(yet)全《まった》く(indeed)あたらしく(new)黄《き》いろ(yellow)と赤《あか》(red)のペンキ((nl:) paint (nl: pek))さえ(even)塗《ぬ》られて(to paint)いかにも(really)異様《いよう》(odd)に思われ、その前《まえ》に(before)は、粗末《そまつ》((an) crude)ながら一本《いっぽん》(one long thing)の幡《はた》(flag)も立《た》って(to stand)いました。  私は老人が、もう食事も終《おわ》り(the end)そうなのを見てたずねました。 「失礼《しつれい》((an) (vs) (id) discourtesy)ですがあのお堂《どう》(hall)はどなた((uk) who?)をおまつり(worship)したのですか。」  その老人も、たしかに(certainly)何か、私に話しかけたくていたのです。だまって二、三度《ど》(times (three times, etc.))うなずき((uk) to nod)ながら、そのたべものをのみ下《くだ》して(to swallow)、低《ひ》く((vs) lowering)言《い》いまし(to say)た。 「……童子のです。」 「童子ってどう云《い》う((uk) what kind of)方《かた》(person)ですか。」 「雁の童子と仰《お》っしゃる((IV) (hon) to say)のは。」老人は食器《しょっき》(tableware)をしまい、屈《かが》んで(to lean over)泉の水をすくい、きれい(clean)に口《くち》(mouth)をそそいで(to pour (into))からまた云いました。 「雁の童子と仰っしゃるのは、まるで(so to speak)この頃《ごろ》(recently)あった昔《むかし》ばなし(legend)のようなのです。この地方《ちほう》(area)にこのごろ降《お》りられました(to descend)天童子《てんどうじ》だというのです。このお堂はこのごろ流沙の向《むこ》う側《がわ》(opposite side)にも、あちこち(here and there)建《た》って(to be built)おります。」 「天《てん》(heaven)のこども(child)が、降りたのですか。罪《つみ》(crime)があって天から流《なが》された(to float)のですか。」 「さあ、よくわかりませんが、よくこの辺《へん》(vicinity)でそう申《もう》します(to say)。多分《たぶん》(perhaps)そうでございましょう。」 「いかがでしょう、聞《き》かせて(to tell)下《くだ》さい(please)ませんか。お急《いそ》ぎ(urgency)でさえなかったら。」 「いいえ、急ぎはいたしません。私の聴《き》いた(to hear)だけ(just)お話《はなし》((io) talk)いたしましょう。  沙車《さしゃ》(Sasha (loc))[※2]に、須利耶《すりや》(Suria (s))圭《けい》(Kei)という人がございました。名門《めいもん》(noted family)ではございましたそうですが、おちぶれて(to come to ruin)奥《おく》さま(his wife)と二人《ふたり》(couple)、ご自分《じぶん》(oneself)は昔からの写経《しゃきょう》(copying sutras)をなさり((IV) (hon) to do)、奥さまは機《はた》(loom)を織《お》って(to weave)、しずか(peaceful)にくらして(to live)いられました。  ある明方《あけがた》(dawn)、須利耶さまが鉄砲《てっぽう》(gun)をもったご自分の従弟《いとこ》(cousin (male, younger than the writer))のかたとご一緒《いっしょ》に(together (with))、野原《のはら》(field)を歩《ある》いて(to walk)いられました。地面《じめん》(ground)はごく(very)麗《うる》わしい(beautiful)青《あお》い(blue)石《いし》(stone)で、空《そら》(sky)がぼうっと(faintly)白《しろ》く(white)見《み》え(appearance)、雪《ゆき》(snow)もま近《ぢか》(soon)でございました。  須利耶さまがお従弟さまに仰っしゃるには、お前《まえ》((fam) you (sing))もさような((an) such)慰《なぐさ》み(comfort)の殺生《せっしょう》(killing)を、もういい加減《かげん》(right)やめたら(to stop)どう(how about)だと、斯《こ》う(thus)でございました。  ところが(however)従弟の方が、まるで(as though)すげなく(gruff)、やめられないと、ご返事《へんじ》((vs) reply)です。 (お前はずいぶん(extremely)むごい(cruel)やつ((vulg) fellow)だ、お前の傷《いた》めたり(to damage)殺《ころ》したり(to kill)するものが、一体《いったい》(what on earth?)どんな(what kind of)ものだかわかっているか、どんなものでもいのち((mortal) life)は悲《かな》しい(sorrowful)ものなのだぞ。)と、須利耶さまは重《かさ》ねて(once more)おさとし(admonition)になりました。 (そうかもしれないよ。けれどもそうでないかもしれない。そうだとすればおれ(I (boastful first-person pronoun))は一層《いっそう》(much more)おもしろい(amusing)のだ、まあそんな下《くだ》らない(to get down)話はやめろ、そんなことは昔の坊主《ぼうず》(Buddhist priest)どもの言うこった、見ろ、向うを雁が行くだろう、おれは仕止《しと》めて(to bring down (a bird))見《み》せる(to show)。)と従弟のかたは鉄砲を構《かま》えて(to set up)、走《はし》って((I) to run)見えなくなりました。  須利耶さまは、その大きな黒《くろ》い(black)雁の列《れつ》(queue)を、じっと(steadily)眺《なが》めて(to gaze at)立《た》たれました(to stand)。  そのとき俄《にわ》かに(suddenly)向うから、黒い尖《とが》った(pointed)弾丸《だんがん》(bullet)が昇《のぼ》って(to ascend)、まっ先《さ》き(the foremost)の雁の胸《むね》(breast)を射《い》ました(to shoot)。  雁は二、三べん揺《ゆ》らぎました(to tremble)。見《み》る見《み》る(very fast)からだ(body)に火《ひ》(fire)が燃《も》え出《だ》し(break out in flames)、世《よ》(world)にも悲《かな》しく(sad)叫《さけ》び(to cry)ながら、落ちて参《まい》った((hum) to go)のでございます。  弾丸がまた(again)昇って次《つぎ》(next)の雁の胸をつらぬきました(to go through)。それでもどの雁も、遁《に》げ(to escape)はいたしませんでした。  却《かえ》って(rather)泣《な》き叫《さけ》び(to cry and shout)ながらも、落ちて来る雁に随《したが》いました(to follow)。  第三《だいさん》(the third)の弾丸が昇り、  第四の弾丸がまた昇りました。  六発の弾丸が六疋の雁を傷《きず》つけまして(to be wounded)、一《いち》ばん(first)しまい(end)の小さな一疋《いっぴき》(one (small) animal)だけが、傷つかずに残《のこ》っていた(to remain)のでございます。燃え叫ぶ六疋は、悶《もだ》え(to be in agony)ながら空を沈《しず》み(to sink)、しまいの一疋は泣《な》いて(to cry)随い、それでも雁の正《ただ》しい(right)列は、決《けっ》して(never)乱《みだ》れ(to be disordered)はいたしません。  そのとき須利耶さまの愕《おど》ろき(surprise)には、いつか((uk) sometime)雁がみな(all)空を飛《と》ぶ(to fly)人の形《かたち》(form)に変《かわ》って((vi) to change)おりました。  赤《あか》い(red)焔《ほのお》(flame)に包《つつ》まれて(to be engulfed in)、歎《なげ》き(grief)叫んで手足《てあし》(one's hands & feet)をもだえ、落ちて参る五人、それからしまいに只《ただ》(only)一人、完《まった》い(safe)ものは可愛《かわい》らしい(lovely)天の子供《こども》(child)でございました。  そして((conj) (uk) and)須利耶さまは、たしかに(surely)その子供に見覚《みおぼ》え(recognition)がございました。最初《さいしょ》((a-no) beginning)のものは、もはや(already)地面に達《たっ》しまする(to reach)。それは白い鬚《ひげ》(beard)の老人で、倒《たお》れて((vi) to collapse)燃えながら、骨立《ほねだ》った(osseous)両手《りょうて》(both hands)を合《あわ》せ(to fold hands)、須利耶さまを拝《おが》む(to beg)ようにして、切《せつ》なく(painful)叫びますのには、 (須利耶さま、須利耶さま、おねがいでございます。どうか(somehow)私の孫《まご》(grandchild)をお連《つ》れ(take along)下さいませ。)  もちろん(of course)須利耶さまは、馳《は》せ寄《よ》って申されました。《いいとも、いいとも、確《たし》かに(certainly)おれが引《ひ》き取《と》って(to take charge of)やろう。しかし((uk) however)一体お前らは、どうした(What's wrong?)のだ。》そのとき次々《つぎつぎ》(one by one)に雁が地面に落ちて来て燃《も》えました(to burn)。大人《おとな》(adult)もあれば美《うつく》しい(beautiful)瓔珞《ようらく》(jewelled necklace)をかけた女子《おなご》(girl)もございました。その女子はまっかな((an) deep red)焔に燃えながら、手《て》(hand)をあのおしまいの子にのばし(to reach out)、子供は泣いてそのまわり(surroundings)をはせめぐったと申しまする。雁の老人が重ねて申しますには、 (私共《ども》(all)は天の眷属《けんぞく》(clan)[※3]でございます。罪があってただいま(just now)まで雁の形を受《う》けて(to undergo)おりました。只今《ただいま》(right now)報《むく》い(to recompense)を果《はた》しました(complete)。私共は天に帰《かえ》ります((I) to go back)。ただ私の一人の孫はまだ帰れません。これはあなたとは縁《えん》(destiny)のあるものでございます。どうぞあなたの子にしてお育《そだ》て(raise)を願《ねが》います(request)。おねがいでございます。)と欺うでございます。  須利耶さまが申されました。 (いいとも。すっかり(thoroughly)判《わか》った(to understand)。引《ひ》き受《う》けた(to guarantee)。安心《あんしん》((vs) relief)してくれ。)  すると老人は手を擦《こす》って(to rub)地面に頭《あたま》(head)を垂《た》れた(to lower)と思うと、もう燃えつきて、影《かげ》(shade)もかたち(form)もございませんでした。須利耶さまも従弟さまも鉄砲をもったままぼんやり((vs) absent-minded)と立っていられましたそうでいったい二人いっしょに夢《ゆめ》を見《み》た(to dream)のかとも思われましたそうですがあとで従弟さまの申されますにはその鉄砲はまだ熱《あつ》く(hot (thing))弾丸は減《へ》って((vi) to decrease (in size or number))おりそのみんな(everyone)のひざまずいた(to kneel)所《ところ》(place)の草《くさ》(grass)はたしかに倒れておったそうでございます。  そしてもちろんそこにはその童子が立っていられましたのです。須利耶さまはわれ(oneself)にかえって(to go home)童子に向って云われました。 (お前は今日《きょう》(this day)からおれの子供だ。もう泣かないでいい。お前の前のお母《かあ》さん((hon) mother)や兄《にい》さん(older brother)たちは、立派《りっぱ》な((an) splendid)国《くに》(country)に昇って行かれた。さあおいで(to come here (from old Japanese))。)  須利耶さまはごじぶんのうちへ戻《もど》られました(to return)。途中《とちゅう》(on the way)の野原は青い石でしんとして(dead silent)子供は泣きながら随いて参りました。  須利耶さまは奥さまとご相談《そうだん》(discussion)で、何と名前《なまえ》(name)をつけようか、三、四日お考《かんが》え(thinking)でございましたが、そのうち(eventually)、話はもう沙車全体《ぜんたい》に(generally)ひろがり(to get around)、みんなは子供を雁の童子と呼びましたので、須利耶さまも仕方《しかた》なく(reluctantly)そう呼んでおいででございました。」  老人はちょっと息《いき》(breath)を切《き》りました(be through)。私は足《あし》(foot)もとの小さな苔《こけ》(moss)を見ながら、この怪《あや》しい(dubious)空から落ちて赤い焔につつまれ、かなしく燃えて行く人たちの姿《すがた》(figure)を、はっきり(clearly)と思《おも》い浮《うか》べました(to remind of)。老人はしばらく私を見ていましたが、また語《かた》り(to tell)つづけました((vt) to continue)。 「沙車の春《はる》(spring)の終りには、野原いちめん(the whole surface)楊の花《はな》(flower)が光《ひか》って(to shine)飛びます。遠《とお》く((a-no) far away)の氷《こおり》(ice)の山《やま》(mountain)からは、白い何とも云えず瞳《ひとみ》(pupil (of eye))を痛《いた》く(painful)するような光《ひかり》(light)が、日光《にっこう》(sunlight)の中《なか》(inside)を這《は》って(to crawl)まいります。それから((uk) and then)果樹《かじゅ》(fruit tree)がちらちら(fluttering)ゆすれ(to swing)、ひばり(skylark)はそらですきとおった(to be transparent)波《なみ》(wave)をたてまする。童子は早《はや》く(fast)も六つになられました。春のある夕方《ゆうがた》(evening)のこと、須利耶さまは雁から来たお子さまをつれて、町《まち》(town)を通《とお》って(to pass (by))参られました。葡萄《ぶどう》(grapes)いろ(colour)の重《おも》い(massive)雲《くも》(cloud)の下《した》(under)を、影法師《かげぼうし》(silhouette)の蝙蝠《こうもり》(bat)がひらひら(flutter)と飛んで過《す》ぎました((vi) to pass)。  子供らが長《なが》い(long)棒《ぼう》(pole)に紐《ひも》(string)をつけて、それを追《お》いまし(to chase)た。 (雁の童子だ。雁の童子だ。)  子供らは棒を棄《す》て手《て》(extended hands)をつなぎ合《あ》って(hold by the hands)大きな環《わ》(ring)になり須利耶さま親子《おやこ》(parent and child)を囲《かこ》みました(to encircle)。  須利耶さまは笑《わら》って(to laugh)おいででございました。  子供らは声《こえ》(voice)を揃《そろ》えて(uniform)いつも(always)のようにはやしまする(to jeer at)。   (雁の子、雁の子雁童子、   空から須利耶におりて来た。)と斯うでございます。けれども一人の子供が冗談《じょうだん》(jest)に申しまするには、   (雁のすてご(abandoned child)、雁のすてご、   春になってもまだ居《お》る((hum) (uk) to be)か。)  みんなはどっと(suddenly)笑いましてそれからどう云うわけか小さな石が一《ひと》つ(one)飛んで来て童子の頬《ほお》(cheek (of face))を打《う》ちまし(to hit)た。須利耶さまは童子をかばって(to protect someone)みんなに申されますのには、  おまえたちは何をするんだ、この子供は何か悪《わる》い(bad)ことをしたか、冗談にも石を投《な》げる(to throw)なんていけないぞ。  子供らが叫んでばらばら(disperse)走って来て童子に詫《わ》びたり(to apologize)慰《なぐさ》めたり(to console)いたしました。或《あ》る(some...)子は前掛《まえか》け(apron)の衣嚢《かくし》(pocket)から干《ほ》した(to dry)無花果《いちじく》(fig)を出して遣《や》ろう(give)といたしました。  童子は初《はじ》め(beginning)からお了《しま》い(end)までにこにこ((vs) smile)笑《わら》って(to smile)おられました。須利耶さまもお笑いになりみんなを赦《ゆる》して(to forgive)童子を連《つ》れて(take along)其処《そこ》(there)をはなれなさいました(to leave)。  そして浅黄《あさぎ》(light blue)の瑪瑙《めのう》(agate)の、しずかな夕《ゆう》(evening)もやの中でいわれました。 (よくお前はさっき(some time ago)泣かなかったな。)その時《とき》(time)童子はお父《とう》さま((hon) father)にすがりながら(to cling to)、 (お父さんわたしの前のおじいさんはね、からだに弾丸《たま》(bullet)を七《なな》つ(seven)持っていたよ。)と斯う申されたと伝《つた》えます(to tell)。」  巡礼の老人は私の顔《かお》(face (person))を見ました。  私もじっと老人のうるんだ眼《まなこ》(eye)を見あげておりました。老人はまた語りつづけました。 「また或る晩《ばん》(evening)のこと童子は寝付《ねつ》けないで(to go to bed)いつまでも(indefinitely)床《とこ》(bed)の上《うえ》((suf) (a-no) above)でもがきなさいました(to struggle)。(おっかさんねむられない(to sleep)よう。)と仰っしゃりまする、須利耶の奥さまは立って行って静《しず》か((an) quiet)に頭を撫《な》でて(to brush gently)おやりなさいました。童子さまの脳《のう》(brain)はもうすっかり(all)疲《つか》れて(to get tired)、白い網《あみ》(net)のようになって、ぶるぶる(trembling)ゆれ(to sway)、その中に赤い大きな三日月《みかづき》(new moon)が浮《う》かんだり(to rise to surface)、そのへん一杯《いっぱい》(full)にぜんまい(royal fern)の芽《め》(sprout)のようなものが見《み》えたり(to appear)、また四角《しかく》(square)な変《へん》に(strangely)柔《やわ》らかな(subdued (colour or light))白いものが、だんだん(gradually)拡《ひろ》がって(to spread (out))恐《おそ》ろしい(terrible)大きな箱《はこ》(box)になったりするのでございました。母さまはその額《ひたい》(forehead)が余《あま》り(excess)熱いといって心配《しんぱい》((vs) worry)なさいました。須利耶さまは写《うつ》し(to transcribe)かけの経文《きょうもん》(sutras)に、掌《て》(the palm)を合せて立ちあがられ、それから童子さまを立たせて、紅革《べにがわ》(crimson leather)の帯《おび》(obi (kimono sash))を結《むす》んで(to tie)やり表《おもて》(outside)へ連れてお出になりました。駅《えき》(station)のどの家ももう戸《と》(door (Japanese style))を閉《し》めて((vt) to close)しまって、一面の星《ほし》(star)の下に、棟々《むねむね》(roofs)が黒く列《なら》びました(to stand in line)。その時童子はふと水の流《なが》れる(to stream)音《おと》(sound)を聞かれました。そしてしばらく考《かんが》えて(to consider)から、 (お父さん、水は夜《よる》(evening)でも流れるのですか。)とお尋《たず》ね(to ask)です。須利耶さまは沙漠《さばく》(desert)の向うから昇って来た大きな青い星を眺《なが》めながら(to gaze at)お答《こた》えなされます(to answer)。 (水は夜でも流れるよ。水は夜でも昼でも、平《たい》らな(level)所でさえなかったら、いつまでもいつまでも流れるのだ。)  童子の脳は急《きゅう》(sudden)にすっかり(completely)静《しず》まって(to calm down)、そして今度《こんど》(now)は早く母さまの処《ところ》(place)にお帰りなりとうなりまする。 (お父さん。もう帰ろうよ。)と申されながら須利耶さまの袂《たもと》(sleeve)を引《ひ》っ張《ぱ》り(to pull)なさいます。お二人は家に入《はい》り(to enter)、母さまが迎《むか》え(to go out to meet)なされて戸の環《カン》(link)を嵌《は》めて(go into)おられますうちに、童子はいつかご自分の床に登《のぼ》って(to climb)、着換《きか》え(to change clothes)もせずに(without (doing))ぐっすり(sound asleep)眠《ねむ》って(to sleep)しまわれました。  また次のようなことも申します。  ある日《ひ》(day)須利耶さまは童子と食卓《しょくたく》(dining table)にお座《すわ》り(to sit)なさいました。食品《しょくひん》(commodity)の中に、蜜《みつ》(honey)で煮《に》た(to cook)二《ふた》つ(two)の鮒《ふな》(crucian carp)がございました。須利耶の奥さまは、一つを須利耶さまの前に置かれ、一つを童子にお与《あた》えなされました(to give)。 (喰《た》べたくない(to eat)よおっかさん。)童子が申されました。(おいしい(delicious)のだよ。どれ、箸《はし》(chopsticks)をお貸《か》し(to lend)。)  須利耶の奥さまは童子の箸をとって、魚《さかな》(fish)を小さく砕《くだ》き((vt) to break)ながら、(さあおあがり、おいしいよ。)と勧《すす》められます(to advise)。童子は母さまの魚を砕く間《あいだ》(interval)、じっと(quietly)その横顔《よこがお》(face in profile)を見ていられましたが、俄かに胸が変な工合《ぐあい》(condition)に迫《せま》って(to press)きて気《き》(spirit)の毒《どく》(poison)なような悲しいような何とも堪《たま》らなく(unbearable)なりました。くるっと立って鉄砲玉《てっぽうだま》(bullet)のように外《そと》(outside)へ走って出《で》られ(to leave)ました。そしてまっ白《しろ》(pure white)な雲の一杯《いっぱい》(a lot of)に充《み》ちた((oK) to be full)空に向って、大きな声で泣き出しました。まあどうしたのでしょう、と須利耶の奥さまが愕ろかれます。どうしたのだろう行ってみろ、と須利耶さまも気《き》づかわれます(to become aware of)。そこで須利耶の奥さまは戸口《とぐち》(door)にお立ちになりましたら童子はもう泣きやんで笑っていられましたとそんなことも申し伝えます。  またある時、須利耶さまは童子をつれて、馬市《うまいち》(horse market)の中を通られましたら、一疋の仔馬《こうま》(foal)が乳《ちち》(milk)を呑《の》んで(drink)おったと申します。黒い粗布《あらぬの》(blemish cloth)を着《き》た(to wear)馬商人《うましょうにん》(horse merchant)が来て、仔馬を引きはなしもう一疋の仔馬に結《むす》びつけ(to join together)、そして黙《だま》って(to be silent)それを引《ひ》いて(to pull)行こうと致《いた》しまする((hum) to do)。母親《ははおや》(mother)の馬はびっくり(be frightened)して高く鳴《な》きました(to make sound (animal))。なれども仔馬はぐんぐん(steadily)連れて行かれまする。向うの角《かど》(corner)を曲《まが》ろう(to turn)として、仔馬は急いで後肢《あとあし》(hind legs)を一方《いっぽう》(in turn)あげて、腹《はら》(belly)の蝿《はえ》(fly)を叩《たた》きました(to clap)。  童子は母馬の茶《ちゃ》いろ(light brown)な瞳を、ちらっと(at a glance)横眼《よこめ》(sidelong glance)で見られましたが、俄かに須利耶さまにすがりついて泣き出されました。けれども須利耶さまはお叱《しか》り(to scold)なさいませんでした。ご自分の袖《そで》(sleeve)で童子の頭をつつむ(to conceal)ようにして、馬市を通《とお》りすぎて(to pass through)から河岸《かわぎし》(riverside)の青い草の上に童子を座《すわ》らせて(to sit)杏《あんず》(apricot)の実《み》(fruit)を出しておやりになりながら、しずかにおたずねなさいました。 (お前はさっきどうして泣いたの。) (だってお父さん。みんなが仔馬をむり(overdoing)に連れて行くんだもの。) (馬は仕方《しかた》ない(it's inevitable)。もう大きくなったからこれから独《ひと》り(alone)で働《はた》らく(to work)んだ。) (あの馬はまだ(still)乳を呑んでいたよ。) (それはそばに置いてはいつまでも甘《あま》える(to fawn on)から仕方ない。) (だってお父さん。みんながあのお母さんの馬にも子供の馬にもあとで荷物《にもつ》(luggage)を一杯つけてひどい(cruel)山を連れて行くんだ。それから食《た》べ物《もの》(food)がなくなると殺《ころ》して(to kill)食《た》べて(to eat)しまうんだろう。)  須利耶さまは何気《なにげ》ない(casual)ふう(way)で、そんな成人《おとな》(adult)のようなことを云うもんじゃないとは仰っしゃいましたが、本統《ほんとう》(truth)は少しその天の子供が恐《おそ》ろしく(terrible)もお思いでしたと、まあそう申し伝えます。  須利耶さまは童子を十二のとき、少し離《はな》れた(to be separated from)首都《しゅと》(capital city)のある外道《げどう》(heretical doctrine)[※4]の塾《じゅく》(coaching school)にお入《い》れ(to enroll)なさいました。  童子の母さまは、一生《いっしょう》けん命《めい》(very hard)機を織って、塾料《じゅくりょう》(school fee)や小遣《こづか》(allowance)いやらを拵《こし》らえて(to make)お送《おく》り(to send)なさいました。  冬《ふゆ》(winter)が近《ちか》く(near)て、天山《てんざん》(Tenzan (loc))[※5]はもうまっ白になり、桑《くわ》(mulberry (tree))の葉《は》(leaf)が黄いろに枯《か》れて(to die (plant))カサカサ(rustle)落ちました頃、ある日のこと、童子が俄かに帰っておいでです。母さまが窓《まど》(window)から目敏《めざと》く(watchful)見付《みつ》けて(to discover)出て行かれました。  須利耶さまは知《し》らない(strange)ふりで写経を続《つづ》けて((vt) to continue)おいてです。 (まあお前は今《いま》ごろ(about this time)どうしたのです。) (私、もうお母さんと一緒に働らこうと思います。勉強《べんきょう》((vs) study)している暇《ひま》((an) free time)はないんです。)  母さまは、須利耶さまのほうに気兼《きが》ね((vs) hesitance)しながら申されました。 (お前はまたそんなおとなのようなことを云って、仕方ないではありませんか。早く帰って勉強して、立派になって、みんなの為《ため》(for)にならないとなりません。) (だっておっかさん。おっかさんの手はそんなにガサガサ(rustling)しているのでしょう。それだのに私の手はこんななんでしょう。) (そんなことをお前が云わなくてもいいのです。誰《だれ》でも(anyone)年を老《ふけ》れば(to age)手は荒《あ》れます(to be rough)。そんなことより、早く帰って勉強をなさい。お前の立派になることばかり(only)私には楽《たのし》み(pleasure)なんだから。お父さんがお聞きになると叱《しか》られ(to scold)ますよ。ね。さあ、おいで。)と斯う申されます。  童子はしょんぼり((vs) being downhearted)庭《にわ》(garden)から出られました。それでも、また立ち停《どま》って(to stop)しまわれましたので、母さまも出て行かれてもっと向うまでお連れになりました。そこは沼地《ぬまち》(marsh land)でございました。母さまは戻《もど》ろう(to return)としてまた(さあ、おいで早く。)と仰っしゃったのでしたが童子はやっぱり停まったまま、家の方をぼんやり見ておられますので、母さまも仕方なくまた振《ふ》り返《かえ》って(to look back)、蘆《あし》(reed)を一本抜《ぬ》いて(to draw out)小さな笛《ふえ》(flute)をつくり(to make)、それをお持たせになりました。  童子はやっと(at last)歩き出されました。そして、遥《はる》かに(in the distance)冷《つめ》たい(cold (to the touch))縞《しま》(stripe)をつくる雲のこちら(this direction)に、蘆がそよいで、やがて(soon)童子の姿が、小さく小さくなってしまわれました。俄《にわ》かに(suddenly)空を羽音《はおと》(buzz)がして、雁の一列《いちれつ》(a row)が通りました時、須利耶さまは窓からそれを見て、思《おも》わず(spontaneous)どきっと((vs) feeling a shock)なされました。  そうして((conj) and)冬に入りましたのでございます。その厳《きび》しい(intense (cold))冬が過ぎますと、まず楊の芽が温和《おとな》しく(mild)光り、沙漠には砂糖水《さとうみず》(sugar water)のような陽炎《かげろう》(heat haze)が徘徊《はいかい》(wandering about)いたしまする。杏やすもも((Japanese) plum)の白い花が咲《さ》き(to bloom)、次《つい》で(subsequently)は木立《こだち》(grove of trees)も草地もまっ青《さお》(deep green)になり、もはや(now)玉髄《ぎょくずい》の雲の峯《みね》(summit)が、四方《しほう》(every direction)の空を繞《めぐ》る(surround)頃となりました。  ちょうどそのころ沙車の町はずれ(slippage)の砂《すな》(sand)の中から、古《ふる》い(old (not person))沙車大寺《だいじ》(Temple)のあとが掘《ほ》り出《だ》された(to dig out)とのことでございました。一つの壁《かべ》(wall)がまだそのままで見附《みつけ》けられ(to locate)、そこには三人《さんにん》(three people)の天童子が描《えが》かれ(to paint)、ことにその一人はまるで(as if)生《い》きた(to exist)ようだとみんなが評判《ひょうばん》((a-no) fame)しましたそうです。或るよく晴《は》れた(to be sunny)日、須利耶さまは都《みやこ》(capital)に出られ、童子の師匠《ししょう》(teacher)を訪《たず》ねて(to visit)色々《いろいろ》((an) various)礼を述《の》べ(to express)、また三巻《みまき》の粗布を贈《おく》り(to give to)、それから半日、童子を連れて歩きたいと申されました。  お二人は雑沓《ざっとう》(congestion)の通りを過ぎて行かれました。  須利耶さまが歩きながら、何気なく云われますには、 (どうだ、今日の空の碧《あお》い(blue)ことは、お前がたの年は、丁度《ちょうど》(just)今あのそらへ飛びあがろうとして羽《はね》(feather)をばたばた((vs) clattering noise)云わせているようなものだ。)  童子が大へんに沈《しず》んで(to feel depressed)答《こた》えら(to answer)れました。 (お父さん。私はお父さんとはなれてどこへも行きたくありません。)  須利耶さまはお笑いになりました。 (勿論《もちろん》(of course)だ。この人の大きな旅では、自分だけひとり遠い光の空へ飛《と》び去《さ》る(to flee away)ことはいけないのだ。) (いいえ、お父さん。私はどこへも行きたくありません。そして誰もどこへも行かないでいいのでしょうか。)とこう云う不思議《ふしぎ》((an) wonder)なお尋ねでございます。 (誰もどこへも行かないでいいかってどう云うことだ。) (誰もね、ひとりで離《はな》れて(to be separated from)どこへも行かないでいいのでしょうか。) (うん。それは行かないでいいだろう。)と須利耶さまは何の気もなくぼんやりと斯うお答えでした。  そしてお二人は町の広場《ひろば》(plaza)を通《とお》り抜《ぬ》けて(to cut through)、だんだん《だんだん》(gradually)郊外《こうがい》(suburb)に来られました。沙《すな》(sand)がずうっとひろがっておりました。その砂が一ところ深《ふか》く(deep)掘《ほ》られ(to dig)て、沢山《たくさん》(many)の人がその中に立ってございました。お二人も下りて行かれたのです。そこに古い一つの壁がありました。色《いろ》(colour)はあせて(to fade)はいましたが、三人の天の童子たちがかいてございました。須利耶さまは思わずどきっとなりました。何か大きい重《おも》い(heavy)ものが、遠くの空からばったり(suddenly)かぶさった(cover)ように思われましたのです。それでも何気なく申されますには、 (なるほど((id) I see)立派なもんだ。あまりよく出来《でき》て(to be able to)なんだか恐《こわ》い(frightening)ようだ。この天童《てんどう》はどこか(in some respects)お前に肖《に》ている(to resemble)よ。)  須利耶さまは童子をふりかえりました(to look back)。そしたら童子はなんだか(somehow)わらったまま、倒《たお》れ(to fall)かかっていられました。須利耶さまは愕ろいて急《いそ》いで(hurriedly)抱《だ》き留《と》められました(to catch in one's arms)。童子はお父さんの腕《うで》(arm)の中で夢《ゆめ》(dream)のようにつぶやかれました(to mutter)。 (おじいさんがお迎《むか》い(to go out to meet)をよこしたのです。)  須利耶さまは急いで叫ばれました。 (お前どうしたのだ。どこへも行ってはいけないよ。)  童子が微《かす》か((an) faint)に云われました。 (お父さん。お許《ゆる》し(pardon)下さい。私はあなたの子です。この壁は前にお父さんが書《か》いた(to write)のです。そのとき私は王《おう》(king)の……だったのですがこの絵《え》(picture)ができてから王さまは殺されわたくしどもはいっしょに出家《しゅっけ》(entering the priesthood)したのでしたが敵王《てきおう》(enemy king)がきて寺《てら》(temple)を焼《や》く(to burn)とき二日《ふつか》(two days)ほど俗服《ぞくふく》(vulgar clothes)を着《き》て(to wear)かくれているうちわたくしは恋人《こいびと》(lover)があってこのまま出家にかえるのをやめようかと思ったのです。)  人々《ひとびと》(people)が集《あつま》って(to assemble)口々《くちぐち》に(unanimously)叫びました。 (雁の童子だ。雁の童子だ。)  童子はも一度《いちど》(once)、少し唇《くちびる》(lips)をうごかして((vt) to move)、何かつぶやいたようでございましたが、須利耶さまはもうそれをお聞きとりなさらなかったと申します。  私の知っておりますのはただ(mere)これだけ((uk) only)でございます。」  老人はもう行かなければならないようでした。私はほんとうに(truly)名残《なご》り惜《お》しく(regret)思い、まっすぐ(upright)に立って合掌《がっしょう》((vs) pressing one's hands together in prayer)して申しました。 「尊《とうと》い(precious)お物語《ものがたり》(tale)をありがとうございました。まことに(really)お互《たが》い(mutual)、ちょっと沙漠のへり(border)の泉で、お眼にかかって、ただ一時《ひととき》(short time)を、一緒に過ごしただけではございますが、これもかりそめ(trifle)のことではないと存《ぞん》じます((hum) to know)。ほんの(just)通《とお》りがかり(to happen to pass by)の二人の旅人《たびびと》(traveller)とは見えますが、実はお互がどんなものかもよくわからないのでございます。いずれ(where)はもろともに、善逝《スガタ》[※6]の示《しめ》された(to indicate)光の道《みち》(road)を進《すす》み(to advance)、かの無上菩提《むじょうぼだい》[※7]に至《いた》る(to come)ことでございます。それではお別《わか》れ(farewell)いたします。さようなら((uk) good-bye)。」  老人は、黙って礼を返《かえ》しました((vt) to return something)。何か云いたいようでしたが黙って俄かに向うを向き、今まで私の来た方の荒地《あれち》(fallow (land))にとぼとぼ(trudgingly)歩き出しました。私もまた、丁度その反対《はんたい》(opposition)の方の、さびしい(desolate)石原《いさ》(stone field)を合掌したまま進みました。 ----------------------------------------------------------------- ●入力者注 ※1 流沙=中国《ちゅうごく》(China)のタクラマカン砂漠《さばく》(desert)を指《さ》す(to point)。 ※2 沙車=タクラマカン砂漠にあったといわれる古代《こだい》(ancient times)の都市《とし》(town)。 ※3 眷属=一族《いちぞく》(a family)の意味《いみ》((vs) meaning)。 ※4 外道=他《ほか》(other)教《おさむ》(Osamu (g))の信者《しんじゃ》(believer)の意味。仏教徒《ぶっきょうと》(Buddhists)が他教の信者を指す際《さい》に(in case of)使《つか》う(to use)。 ※5 天山=中国・キルギスタンの国境《くにざかい》(boundary (nation, state, etc.))近くにある山脈《さんみゃく》(mountain range)を指す。 ※6 善逝=梵語《ぼんご》(Sanskrit)で、悟《さと》り(Buddhist enlightenment)に到達《とうたつ》((vs) reaching)した者の意味。 ※7 無上菩提=無上はこの上《のぼ》ない(to rise)、菩提は悟りのこと。 ----------------------------------------------------------------- 底本:「インドラの網」角川《かどがわ》(Kadogawa (s))文庫《ぶんこ》(library)、角川書店《しょてん》(bookshop)    1996(平成《へいせい》(Heisei (reign of Emperor))8)年6月20日再版《さいはん》(reprint(ing)) 底本の親《おや》(parents)本:「新《しん》((pref) new)校《こう》((suf) -school)本 宮澤賢治全集《ぜんしゅう》(complete works)」筑摩《つかま》(Tsukama (loc))書房《しょぼう》(library)    1995(平成7)年5月発行《はっこう》(issue (publications)) 入力:浜野智 校正《こうせい》((vs) proofreading):浜野智 1999年7月26日公開《こうかい》((vs) presenting to the public) 1999年8月26日修正《しゅうせい》((vs) amendment) 青空《あおぞら》(blue sky)文庫作成《さくせい》(producing)ファイル: このファイルは、インターネット(the Internet)の図書館《としょかん》(library)、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp)で作《つく》られ(to make)ました。入力、校正、制作《せいさく》((vs) work (film, book))にあたったのは、ボランティア(volunteer)の皆《みんな》(everybody)さんです。 Additional readings and English translations added by Michael Koch (tensberg@gmx.net). All errors are probably mine.